奇妙な光だった。
辺りを藻のごとく、べたべたと塗りたくるように緑を照らす。
その照明は狂気的な発光をしていた。直視すると目が焼ける。
ふと自分の前に立つ男から生える影を見る。ーーー赤い。
確かに彼の陰の足元は赤く染まっていた。付近にいる人々の陰がみな赤いことに気づくのに時間は要らなかった。緑一色の空間のその赤は華そのものであった。
ーーー自分の影が気になり始める。
他人の陰の”赤”を見て高揚したのだ。その”赤”を自分も持っているという実感は、私を快楽的にさせてくれる。私の赤を確認することで、この奇怪な緑の中でも我々は団結できる。存在を認識し合える。我々は同志だ、同じ世界を共に生きている。苦しみ、悶えながらも、我々は手を取り合い、助け合うことができる。”赤"が証拠だ。この"赤”こそ、我々が同じ血の通った人間であることの証明なのだーーー。
私は意気揚々として、影を確かめるべく振り返った。