近似トレバ虚構

実験的創出Blog

2022-01-01から1年間の記事一覧

溶けかけの飴|歌詠み#3

腐っても腐ってもなお味が出る それは腐りと言えるのだろか 横ならび「月がきれい」とポツリ出る 今のは文字通りの意味だから そこの木さん あなた千年生きたくて生きたの? 「レトロ」の箔をおしたとき それは「さびれ」の隠れ蓑 カルピスと傷とゲームとラ…

境界|出力#11

「俺この前あれみた。『すずめの戸締まり』」 「お、俺も見た。めっちゃよかった!」 「な、よかったよな。N樹もみた?」 『いや…見れてないんすよね』 「そっかーじゃあんま話すとネタバレになるなー、めっちゃ良いからみてみ」 『あぁー、見れたら見てみ…

人知れずサーカス|歌詠み#2

仏になるため旅に出たあの人をクマに見立てて帽子をかぶせて 一年が十年ぐらいに感じてた 今は五か月ぐらいだもんな 生きるたび積み重なってくもどかしさ できれば償わせてください 罪 顔上げて風呂が冷めてる午前二時 目覚める以外は死ぬのといっしょ ねむ…

わたし橋|歌詠み#1

冷蔵庫ヴォォンと音が響くのは まだ寝てるのか午前6時 透明の計量カップよどこにいた もう食器を片付けたのに 私がさ あと30センチ左にさ ズレたら死ぬのさ右側通行 珈琲と醤油をならべてのぞいたら見分けがつかない 混ぜてもいいか 鼻水がサラサラしてる…

流血|叙事情#2

すっかり日の落ちた夜、私は自転車で帰路についている時であった。ゆるやかな坂を下っていくと、車道と歩道の境界に数人集まっているのが見える。白髪の男性が横に倒れ、傍には自転車も倒れており、それらを男性二人が囲んでいた。明らかに異様である。さら…

過去の望み|思索#1

過去の望みが叶うことを望まないのは、我儘と見なされるのだろうか。「過去」というのは数日前や数か月などのものではない。数年前、数十年前の自分が抱いていた望み。それが時を経て叶う。例えば、小学生の時に抱いた「宇宙に行く」という夢が叶う。より俗…

受け身消費|出力#10

仕事から帰宅した。ようやく自由な時間を過ごすことができる。 おもむろにスマホを手にし、Twitterでトップに表示されたニュース記事を辿る。時事を一通り確認し終えたら、ソファに座ってYouTubeを開き、登録チャンネルの更新動画を一つ見て、そこから関連動…

秋の桜|現像#7

「桜」という言葉には、色が定着している。「桜色」という言葉があることがそれを証明している。その色とは、当然、春に咲かせるサクラの花の色である。サクラの花が満開に咲き誇る様は、春という季節を代弁するものとなり、時に「日本」を象徴する光景でも…

はけ口|叙事情#1

「…はい。K教授による鍾乳洞の保全に関するお話でした。ありがとうございました。ここから、参加された皆様からのご質問を受け付けます。すでに時間がおしてますので、ご質問はお一人様一つとさせていただきます。」 私は現在取り組んでいる事業の関係で、…

宇宙と生|夢判断#8

先ほど、ミサイルの発射に成功したとの報道を目にした。ここ数年、地球では惑星間ミサイルの開発に勤しんでおり、いつ実践投入されてもおかしくない段階に来ていた。 かつて、地球でしか生息できなかった人類その他の生物は、今や太陽系の至る所に点在し、そ…

置き去りの愛|現像#6

「じゃあね。ごめん」 彼女の背中が、遠くなってゆく。僕はそこから立ち上がることができなかった。ただ、僕の心は彼女を追いかけたい、離れたくないと願っている。体は微動だにしなかった。 僕にとって、誰かと恋仲になったのは彼女が初めてであった。自分…

公園の「場」|出力#9

いつ頃からか、気づいた時には、公園に足を踏み入れ難くなっている自分がいた。 子どもたちが遊んでいたり、学生服をまとった若者が談笑していたり、子ども連れのママ友同士でベンチに座っていたりする姿を見ると、公園へ入る気持ちが冷めてしまう。まるで、…

生きやすい体|解釈#4

この体はとても生きやすい。背が高く、高い所に手が届く。身体が細いため、人混みでも通り抜けやすい。腕が長いため、床に何かを落としても、姿勢を崩さず取ることができる。指先が細いため、何事も器用にこなせる。体重が軽いため、長時間立っていても辛く…

交響的セミナー論|出力#8

会社の先輩に勧められ、私はとあるセミナーに参加した。聞いた話では、今回の講師はこの界隈では名高い人らしく、国会に参考人として招致されたこともあるとのことである。二百席ほどある会議室を、空き一つなく埋め尽くしている様子からも、その有名さを伺…

重い腰を上げる|出力#7

重い腰を上げるのに、実に体感一時間ほどかかった。実際には十分とて経っていないはずであるのだが、十分のランニングが普段の生活一時間分の消費カロリーであるがごとく、この腰を上げるまでの十分間、私の心、体、脳は忙しく駆け回っていたのであった。 き…

悪魔島|夢判断#7

人間十数名が島へ流れ着いた。私もその一人に含まれていた。その島には悪魔が棲み着いており、人間を見つけては喰らう。体型は小振りなものから大型の、それこそ人間離れしたものもいた。みな皮膚が赤く、血の色をしていた。 我々はその悪魔どもと対峙せねば…

無“関係”|現像#6

"物事"から離れたかった。 この世界に生起する全ての物事は"他"によるものであり、"自己"が生むものなど存在しないことを私は悟った。私の人生は"他"との関係よって構成され、定められ、(その終わりさえ!)自分で決められるものは一切ない。「自由意志」など…

陰謀論とマングローブ林と礼拝堂|夢判断#6

自宅のリビング。家族で朝食を取るそばで、テレビではニュースが報じられている。 『ロシア留学生2036人、航空事故により死亡』 「またか」日本では頻繁に海外留学生、修学旅行生が死亡するケースが相次いでいる。政府による外国人排斥のための牽制行為なの…

受刑者の取材|夢判断#5

今、刑務所にいるらしい。 そして、私たち二人は受刑者への聞き込み取材に来たようである。珍しく、今夜の夢は一人ではないようだ。連れの女性の名は「トトトト」、茶髪の丸みショートで、ランニング用サンバイザーを着用している。年は私と変わらないように…