叙事情
晩秋の或る日曜の朝七時半、何故か無性に朝マックを食べたくなった。その願望は唐突だった。最近、私の周りで朝マックが話題に上がったという訳でもない。強いて言えば、随分前に会社の同期が朝マックを食べた話をしたことと、先月読んだ大﨑洋の『居場所。…
二〇二三年九月二日、土曜日の朝八時。今日は休日ではあったが、皮膚科に行くため朝早い時間から家を出る。この後、私は少々不本意な経験をした。その経験により、現在の私の人間性が露呈されることとなったため、少し書き留めておきたくなった。 皮膚科まで…
四階に着き、一通り歩いた。何度か人にぶつかりそうになった。それだけ私の歩幅は広く、歩く速度は高まっていた。私の中で確かな情熱を感じている。その情熱は冷たかった。熱く燃えたぎる炎ではなく、周囲の熱を奪って凍らせる冷たい炎。冷たかったが、今の…
二人を追い抜いたところからはそう離れていないため、しばらくこの辺りで待っていればそのうち来るはずだ。ただ、今いる場所は障害物が多く、二人が歩いてくる方向が見渡しにくかったため、場所を探すことにした。そう思って手前を見た途端、すでに二人が目…
明日、明後日に開催を控えるとあるイベントの会場設営を手伝いに来た。私が属す団体からの参加者は自分含め三人。一つ上の男性の先輩と、もう一人は今日初めてお目にかかる女性のNさんであった。私は途中までNさんを主催者側の人間だと思っていたが、先輩…
私はグミが好きだ。疲れた日の楽しみはコンビニで新作のグミを買うことだ。ただ、今売られているグミのほとんどをすでに食べたことがあると言っても過言ではない。子どものときからお菓子は決まってグミであった。チョコレートやスナック菓子を好む男児が多…
すっかり日の落ちた夜、私は自転車で帰路についている時であった。ゆるやかな坂を下っていくと、車道と歩道の境界に数人集まっているのが見える。白髪の男性が横に倒れ、傍には自転車も倒れており、それらを男性二人が囲んでいた。明らかに異様である。さら…
「…はい。K教授による鍾乳洞の保全に関するお話でした。ありがとうございました。ここから、参加された皆様からのご質問を受け付けます。すでに時間がおしてますので、ご質問はお一人様一つとさせていただきます。」 私は現在取り組んでいる事業の関係で、…