近似トレバ虚構

実験的創出Blog

2023-01-01から1年間の記事一覧

fast morning|叙事情#9

晩秋の或る日曜の朝七時半、何故か無性に朝マックを食べたくなった。その願望は唐突だった。最近、私の周りで朝マックが話題に上がったという訳でもない。強いて言えば、随分前に会社の同期が朝マックを食べた話をしたことと、先月読んだ大﨑洋の『居場所。…

憤りSeptember|叙事情#8

二〇二三年九月二日、土曜日の朝八時。今日は休日ではあったが、皮膚科に行くため朝早い時間から家を出る。この後、私は少々不本意な経験をした。その経験により、現在の私の人間性が露呈されることとなったため、少し書き留めておきたくなった。 皮膚科まで…

監獄のような教室の先は|夢判断#14

自分を含めた十数人の人間が真っ暗な廊下を歩いている。壁や床は酷く錆びれている。コンクリートか、木造か判別がつかないほど、壁床一面に黒い錆がびっしりとついていた。 廊下沿いにあった一室に入れられる。部屋の正面に黒板があり、それに向かうように机…

舞台と命|夢判断#13

気が付くと、広いホールの席に私が座っている。照明が落とされていて辺りは薄暗く、目線の先にある舞台だけが光を放っていた。私の目にそれは小さく映っていることから、自分が最後列近くに座っていることが分かる。舞台ではまだ何も行われておらず、まばら…

粒子の旅路(四)|夢判断#12

とても長い年月が経ったように思えた。意識を取り戻した私は目を開ける。しかし、目を開けても映るのは暗い闇だった。肌の感触から地面は砂であることが分かる。大気は冷たかった。上を見上げると、三日月よりも細い月が浮かんでいる。夜になっていた。辺り…

粒子の旅路(三)|夢判断#11

この国に来てから、私は宿泊について何も考えていなかった。しかし、あの食堂で私と談笑していた男性が偶然にも民宿を営んでおり、今日は空いているからうちに泊まっていけと言うのだ。なんという幸運。私は喜んでお願いし、民宿まで案内してもらった。民宿…

粒子の旅路(二)|夢判断#10

私は市場からそう遠くない食堂で腹ごしらえをしていた。木造の建物、吹き抜けの開き戸。西部劇からそのまま出てきたような店である。先ほどまでの市場とはまた違う世界に来たようであった。客と談笑しながら水を飲んでいると、これまた西部劇よろしく気性の…

粒子の旅路(一)|夢判断#9

気づけば、私は飛行機に乗っていた。窓際の席に座っており、外を眺めると雲海が果てしなく広がっている。さらに、辺りを見渡しても日本人は一人もおらず、日本語すら目に入らない。どうやら、すでにどこか日本以外の国の空港から乗り継いでいるらしい。せめ…

夜の月 夕方の月 朝の月|歌詠み#4

陸地より海にゆだねるほうが楽だからぜんぶ海になっちゃえ 赤くなる万能センサー 僕の肌 ニュースも言わない一月の花粉 夜の道 こすれ合ってる男女の手 早くつなぎな もどかしいから 河畔にて木陰に寄り添うカモの群れ 人間にはない冬景色かな フンが落ち 見…

世界の証拠(下)|叙事情#6

四階に着き、一通り歩いた。何度か人にぶつかりそうになった。それだけ私の歩幅は広く、歩く速度は高まっていた。私の中で確かな情熱を感じている。その情熱は冷たかった。熱く燃えたぎる炎ではなく、周囲の熱を奪って凍らせる冷たい炎。冷たかったが、今の…

世界の証拠(中)|叙事情#5

二人を追い抜いたところからはそう離れていないため、しばらくこの辺りで待っていればそのうち来るはずだ。ただ、今いる場所は障害物が多く、二人が歩いてくる方向が見渡しにくかったため、場所を探すことにした。そう思って手前を見た途端、すでに二人が目…

世界の証拠(上)|叙事情#4

明日、明後日に開催を控えるとあるイベントの会場設営を手伝いに来た。私が属す団体からの参加者は自分含め三人。一つ上の男性の先輩と、もう一人は今日初めてお目にかかる女性のNさんであった。私は途中までNさんを主催者側の人間だと思っていたが、先輩…

愚民ばかりでグミばかり|叙事情#3

私はグミが好きだ。疲れた日の楽しみはコンビニで新作のグミを買うことだ。ただ、今売られているグミのほとんどをすでに食べたことがあると言っても過言ではない。子どものときからお菓子は決まってグミであった。チョコレートやスナック菓子を好む男児が多…