近似トレバ虚構

実験的創出Blog

出力

境界|出力#11

「俺この前あれみた。『すずめの戸締まり』」 「お、俺も見た。めっちゃよかった!」 「な、よかったよな。N樹もみた?」 『いや…見れてないんすよね』 「そっかーじゃあんま話すとネタバレになるなー、めっちゃ良いからみてみ」 『あぁー、見れたら見てみ…

受け身消費|出力#10

仕事から帰宅した。ようやく自由な時間を過ごすことができる。 おもむろにスマホを手にし、Twitterでトップに表示されたニュース記事を辿る。時事を一通り確認し終えたら、ソファに座ってYouTubeを開き、登録チャンネルの更新動画を一つ見て、そこから関連動…

公園の「場」|出力#9

いつ頃からか、気づいた時には、公園に足を踏み入れ難くなっている自分がいた。 子どもたちが遊んでいたり、学生服をまとった若者が談笑していたり、子ども連れのママ友同士でベンチに座っていたりする姿を見ると、公園へ入る気持ちが冷めてしまう。まるで、…

交響的セミナー論|出力#8

会社の先輩に勧められ、私はとあるセミナーに参加した。聞いた話では、今回の講師はこの界隈では名高い人らしく、国会に参考人として招致されたこともあるとのことである。二百席ほどある会議室を、空き一つなく埋め尽くしている様子からも、その有名さを伺…

重い腰を上げる|出力#7

重い腰を上げるのに、実に体感一時間ほどかかった。実際には十分とて経っていないはずであるのだが、十分のランニングが普段の生活一時間分の消費カロリーであるがごとく、この腰を上げるまでの十分間、私の心、体、脳は忙しく駆け回っていたのであった。 き…

無視力障害|出力#6

知らないふりをする。言い換えれば、無視する、視なかったことにする。 ありきたりであたりまえの行為と思われる。 しかし、全人類を見渡せば、ある1つの行為を行えない者がきっといる。 ”無視”することができない者も。 空き缶が落ちている。そう、落ちて…

天然物であり人工物である”人間”|出力#5

人間とは生命現象である。 雄と雌それぞれの生殖細胞の接触により、生物学的に発現した存在。初期段階の性行為を除けば、受精、細胞分裂、臓器生成、胎内生命維持、出産と、人間の発生は限りなく自然的であり(本能的行為とすれば性行為すら自然的と言えなく…

統制部|出力#4

ある星の統制部における電報記録。 (この星の支配層は"1"である) 〈"5"ガ窃盗ヲ行ッタモヨウ〉 《窃盗は下劣な行為故、誠に遺憾である。犯罪者に禁錮一時間の刑を実行せよ。》 〈"2"ガ"7"ノ世帯ヘ詐欺ノ手口ニヨリ多額ヲ奪ッタモヨウ〉 《詐欺行為は非常に卑…

退屈の本質|出力#3

退屈。 このいかにも社会に対する自発的反抗の意を呈する熟語は、自己の劣性の発露である。 "屈"し、"退"く。 いずれの行為も自発的と呼べるものではなく、外圧に敗れた受動的結果そのものである。退屈の感情を抱くならば、すなわち敗北の自覚を発生させるべ…

内蔵|出力#2

滾る。 血液の動脈を感じる。血液の熱を感じる。血液の蒸発を感じる。指先を眺めると震える。血の震えだ。命の振動だ。 浮動。 胎動を感じる。遥か深淵の記憶。遺伝子とGenom。神秘的な羊水。煌めく。肉に包まれる生肉。 増殖。 脳の形成を感じる。手足の伸…

矛盾としての支配|出力#1

”支配”。 文明が生んだこの大いなる矛盾の概念は、歴史において、今において、負の感情を生産する。 そしてこの先も生産を続けていく。 支配は不可能である。 大国を統治した支配者は、自我に支配された帰結でしかない。 宇宙を支配した時、その自我は己を包…