近似トレバ虚構

実験的創出Blog

悪魔島|夢判断#7

 

人間十数名が島へ流れ着いた。私もその一人に含まれていた。その島には悪魔が棲み着いており、人間を見つけては喰らう。体型は小振りなものから大型の、それこそ人間離れしたものもいた。みな皮膚が赤く、血の色をしていた。

 

我々はその悪魔どもと対峙せねばならなかった。始めは抵抗を試みた。だがそれも、二人目が喰われてからは無謀であると気づいた。逃げ惑う人間とそれを嬉々として追う悪魔、という模範的な構図となった。逃げている間、我々はいかにしてこの島を脱出するか、そのことばかり頭を巡らせた。

 

私を含む四人が、廃墟と化した小屋で息を潜める。数日ぶりの安息であった。だが、精神の疲弊しきった人間に「安心」という薬を与えると、その解放から気が狂いだす。

一人の男が小躍りをし始める。言語にならない旋律を口ずさみながら。我々三人は一緒に踊りだしはしないものの、それを制することもしなかった。制止する気力すら無い。「安心」に酔っていたのは我々も同じであったのだ。また、いずれは自分もあの悪魔に喰われてしまうだろうという諦めも共有していた。

 

外からパレードのような楽器の演奏が鳴り響いてきた。確認せずとも理解できた。見つかってしまったのだ。

 

 

悪魔らが各々楽器をかき鳴らし、横並びになり、赤く染まった空を背景に、こちらに行進してくる。心臓にまで響く太鼓の振動、耳に刺し込まれるシンバルの軋み、脳が掻き混ぜられるトランペットの乱れ。なにより、狂気と歓喜と悪意に満ちた嗤い声。その悪魔のパレードは、これまでのどんな逃走よりも、私を酷く恐怖させた。

 

我々四人は悪魔たちに囲まれ、跪き、今に喰われようとする状況にあった。長と思われる大柄な悪魔が語りだす。

「お前たちは最期まで生き延びた優秀な人間だ。殺すには惜しい。なぜなら、お前たちのような優秀な個体が種族を繁栄させ、永続させ、またこうして餌となる人間を我々に寄こしてくれるのだからな。だが、お前たちは今にも死にたそうな面構えをしている。情けない。情けないお前たちに、選択を与えよう。喰うのは一人だけにしてやる。だが、その一人は自分から宣言しろ。無論、最初に宣言した者だけだ。他の三人は逃がしてやるが、ここへ来たことを一生忘れないように傷を入れてやる。十年後までにここへ別の人間を連れてこなければ、その傷は自身を死へ至らせる。一人を喰うのは、三人にその傷を入れた後だ」

四人は黙り込んだ。この時、我々は策略にはまってここへ連れてこられたのだと、人間への憎しみを湧き上がらせた。今、喰われればそこで何もかもが終わる。ただ、生きようとすれば、別の人間を犠牲にする十字架を背負わされる。私は決断した。

「私を喰らってください」

他の三人が息を取り戻したように思えた。悪魔どもは私の言葉を聞いてパレードの時のように嗤い喚く。長が応えた。

「いいだろう。では傷を入れた後、お前をじっくりと喰らってやる」

傷は一人ずつつけられた。一人、また一人。三人目に傷がつけられようとした瞬間、私は立ち上がって駆けだした。

 

 

目が覚めた。

ここ数ヶ月の中でも、格別に目覚めが良かった。