近似トレバ虚構

実験的創出Blog

受刑者の取材|夢判断#5

 

今、刑務所にいるらしい。

そして、私たち二人は受刑者への聞き込み取材に来たようである。珍しく、今夜の夢は一人ではないようだ。連れの女性の名は「トトトト」、茶髪の丸みショートで、ランニング用サンバイザーを着用している。年は私と変わらないように見える。自分を田舎者扱いし、芋っぽい女だと呼んでいた。元気はいっぱいである。

 

状況を把握しようと、辺りを見渡した。刑務所はコンクリートむき出しでコの字型の4階建て。我々は現在、コの字の内側にある広場にいる。昼休憩か何かであろうか、囚人と思われる人々が広場にて各々の過ごし方をしている。ある者は筋トレ、ある者は何もせず座り、そして多くが広場を巡るように、ただ歩いていた。とりわけ異彩を放っていたのは、その広場と同じ空間に、なぜかプールがある。見た目は学校にあるような、浮きで仕切られている方形のプール。無論、そこで時間をつぶす者もいた。

 

さて、目的も分からない受刑者への聞き込みを始める。我々二人は別々に行動することにした。私が広場に留まり、トトトトが建物の中へ入る。

私が受刑者へ何を尋ねているのかまでは、夢を鑑賞しているだけでは分からなかった。ただ、聞き込みを進めるうち、筋骨隆々の男がじっと私を見つめているのに気づいた。いや、実際には私ではなく、私の身に付けているものを見ていたようである。首から下げた一眼レフ?ポケットに収まっていない横長の財布だろうか?違う、ポケットより少し横にズレて……。私が身の危険を感じたと同時に、男が襲い掛かる。一度は掴まれたものの、咄嗟に振り払い、考えること無くプールへ駆けていた。プールへ向かって、どうするか、何も考えていなかった。男が追いかけてくる。この刑務所に警備員はいないのかと、息せき切りながらも叫びたかった。プールへたどり着く。飛び込めば追いつかれる、そう感じた私はプールを横切る大きめの浮きの繋ぎの上を走ることにした。現実であれば不可能であろう。夢の可能性は無限大だ。それゆえに、もっと良い方法があるだろうと、夢の鑑賞者である私はケチをつけたくなった。ともかく、私は浮きの上を必死に走っていた。足を止めれば今にでも沈みそうだ。周りの目を気にせず、追いかけてくる男の様子も顧みず、聞き込みの目的も忘れ、今すぐにでもこの場所を去りたかった。

 

急に場所が切り替わる。鑑賞していた私は戸惑ったが、すぐにこれがトトトトの行動を映し出す視点だと理解した。とはいっても、私は彼女の全体像を確かめられる、すなわち主観ではなく第三者の視点であった。彼女は建物内で取材を行っていた。刑務所の内部は薄暗い蛍光灯で照らされ、清潔な空気が漂う空間には見えなかった。そんな雰囲気の中でも、彼女は活発に聞き込みを続ける。取材対象は気弱そうな細身の男へ移る。とても罪を犯すようには見えない、おどおどとした根暗な若い男である。いや、こういう男こそ、社会への反抗心を日常の中で育てているのかもしれない。トトトトが男へ尋ねると、彼は頬を赤らめたように見える。おどおどとした様子が、もじもじとした様子に見えてきた。

「私なんかに惚れるなら、どんな女にも惚れちゃうよ」トトトトが言った。彼女はよほど自分を卑下しているようである。男は無言のまま、小刻みに首を左右に振っていた。

「わかった。久々に女に会えて、嬉しくなっちゃってるんでしょ」男は先ほどより大きく首を振る。トトトトは少し目を見開きつつも、微笑を浮かべていた。

 

我々二人は始めにいた場所で合流した。トトトトは満足そうに笑みを浮かべ、私は疲弊しきっている。お互いに得られた情報を簡潔に伝えあった。その短いやり取りだけでも、私と彼女の収穫の差は歴然であった。