近似トレバ虚構

実験的創出Blog

暴力夢|夢判断#1

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玄関に人が立っている。地面にまで垂れ下がった長い白髪に、ベタな白装束。『リング』の貞子を連想させるそれが、私の家の玄関にいる。

 

現実であるはずがない。これは夢だ。

人は夢を夢と認識できたとき、あらゆる制約から解放されるはずである。なぜなら夢は己の脳の生成物、思考の表出であるからだ。主人が眠っている間の脳の自動思考が夢であるならば、夢を認識した途端にその思考の主導権は私が握るはずである。隠れて障子で爪研ぎする猫が、主人に見つかった途端に逃げ出すように、密かな行為は主人に見つかるともはや意味を成さない。

 

そうだ。この夢は私が見つけてしまったのだから、すでに意味を成さないはずなのだ。

ならば、今感じているこの恐怖は何だ。

なぜ体が動かない?目の前の化け物はなぜ消えない?

思考である夢に、私は思考させられている。先程、私は確かに私自身をを"主人"と呼んだ。夢が私に従属しているならば、この状況は生まれないはずなのだ!

 

…従属しているのは、私か?

脳が本当の主人であり、私は肉の着ぐるみに過ぎないのか。今の状況のように、貴方はその気になればいつでも私を恐怖の底に陥れることができるのか。

 

化け物が近づいてくる。

嗚呼、"自分の立場をわきまえろ"と、貴方は度々こうして釘を打っていたのか。貴方の意図に気づけていなかった。許して欲しい。私は十分怯えている。今後は貴方の思うように動く。許して欲しい。

 

化け物が私の心臓に入りこんだ。心臓が跳ねる。

私の体は、化け物と同化していた。