近似トレバ虚構

実験的創出Blog

赤眼|夢判断#2

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私は駅のホームにいた。

その駅は日常的に利用している見慣れたものであったが、明らかに異質な状況に立たされていた。化け物がいるのである。

 

全身を黒に染めており、形状は蜘蛛のような、龍のような、定まらない様相である。とりわけ私を感情的にさせたのは、大きく、吸い込まれそうな、赤い眼。よほどこの眼が注意を引いたのか、気が付けば私はこの化け物を”赤眼”と呼んでいた。

 

私の体は動いていた。”動いていた”というのは、夢の中の私が動いていたのを、実の私は傍観することしかできなかったためである。もしくは、夢の私と実の私は同一であるが、私の意思が夢に反映されなかったからとも言える。とにかく、この夢において私の意思は意味を持たなかった。しかし質の悪いことに、夢の中での感情は実の私が感じているように錯覚させられるのである。夢の支配者である脳は、確実に私を苦しめる術を確立している。

 

私は恐怖を感じていた。そして、恐怖を原動力に”赤眼”から必死に逃亡を図っていた。ホームを駆け巡り、時に私の倍以上ある高さの"赤眼”を飛び越えるほどの跳躍を見せることもあった。

私は駅を出る。幸い、”赤眼”は移動が遅く、追いかけてくる気配は無かった。始めから、私を仕留める気すら無かったのかもしれない。ただ、私は恐怖の感情を拭い去ることが出来ず、ひたすらに街中を駆けていた。駅内が明るくて気が付かなかったが、街はすっかり夜更けの下にあるらしい。

その時、夜空に閃光が走るのを見た。流星のようであった。その流星は夜空に曲線を描きながら次第に形を見せ―

 

―私の目の前に落ちた。

 

私は叫びながら、隕石の衝撃波に飛ばされる。辛うじて意識はあったものの、動揺が私を夢から現実へ引き戻す最中であった。私は天へ昇るかの如く、現実に吸い込まれる。一瞬だけ、私は隕石の方への一瞥を許された。

隕石は、人間の形をしていた。